社内恋愛のススメ
満員電車に揺られて、20分。
オフィス街のど真ん中にある、我が会社。
就活という名の戦争を勝ち抜いて入社した、そんな会社。
「おはようございまーす!」
「あっ、有沢さん、おはよう。」
「おはよう!」
会社に辿り着けば、たくさんの人に挨拶される。
結構規模が大きいことで知られる、うちの会社。
テレビなんかでも、たまに紹介されちゃう様な大企業。
人数が多いから、それなりに社内に知り合いがいるのだ。
いつも通りの会社。
いつも通りの朝の風景。
朝の挨拶を交わしつつ、エレベーターに乗り込む。
そこにいたのは、昨日会ったばかりのあの男だった。
「おはよう、長友くん!」
私は笑顔で、その人物に話しかける。
エレベーターの中に立っていたのは、長友くん。
そう、昨日、私をわざわざ呼び出してくれた、あの長友くんだった。
顔色が悪い。
心なしか、いつもより青い気がする。
理由は聞かなくても、分かってしまった。
「………有沢、おはよう。お前、何でそんなに元気なの?」
げんなりした様子で、長友くんがそう尋ねてくる。
私の体調がいいのは、ある意味、長友くんのお陰。
長友くんが呼び出してくれたお陰で、私は深酒をすることもなく、そのまま寝てしまった。
ベロンベロンに酔わずに、素直にベッドの中に潜り込んだのだ。
次の日に仕事があることが分かっていれば、そこまで深酒をすることもないけれど。
あぁ、長友くんだ。
長友くんらしい。
こういう所、入社当時から変わらないんだから。
苦笑いで、質問を返す。
「二日酔い?」
そんなの、聞かなくても分かるか。