社内恋愛のススメ



だから、本当に好きな人に伝えたい。


この気持ちを。

この想いを、私の言葉で。



「長友くんのことが………好き。」


多分、かなり前から。

自分で自覚するよりもずっと前から、長友くんのことが好きだった。


気付くのが、遅過ぎるくらい。



「別れたばかりって思うかもしれないけど、軽蔑するかもしれないけど、それでも………な、長友くんのことが好き………なの。」


どうしようもないくらい、長友くんのことが好き。

止められないくらい、長友くんのことが好きなんだ。



言っちゃった。

ついに言ってしまった。


自分の気持ち、長友くんに伝えてしまった。



どうしよう。

どうしよう。


そう考える暇をロクに与えず、長友くんは私の体をギュッときつく抱き締めた。





「………、長友………くん。」


喜びが、全身を駆け抜ける。


嬉しい。

ただ抱き締められただけなのに嬉しくて、涙が込み上げる。


滲む世界の向こうで、長友くんがこう告げる。



「有沢、好きだ………。俺、ほんとにお前のことが好きなんだ。」


長友くんのその言葉で、再び涙が溢れ出す。


あぁ、この人、私のことを泣かせるのが得意なんだ。


長友くんの言葉は、簡単に私の涙腺を崩壊させる。


タチが悪い。

本当に、タチが悪いんだ。



伝え合うのは、本音。


お互いの心の奥にある、本当の心。



「お前と主任が付き合っていたことは、きっとこれからも忘れられない………と思う。」

「………うん。」


当たり前だ。


目の前で、好きな人が別の人に惹かれていくのを見て。

見せ付けられて。


忘れられる訳がない。

簡単に忘れられるはずがない。



「だけど、どうしても諦められなくて。有沢のこと、諦めたくなくて。………笑っちゃうだろ?」


長友くんの率直な言葉が、胸を突く。



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