社内恋愛のススメ
こんな時こそ、強引にしてよ。
強引にでも、私のことを求めてよ。
私、別に、どうしても結婚したくないとまでは思ってないんだよ。
結婚している自分が、想像出来なかっただけで。
誰かの妻になっている、自分の姿が思い浮かべられなかっただけで。
長友くんなら。
長友くんとの結婚なら、想像出来る。
きっと笑ってる。
2人で並んで、笑っているに違いない。
どうでもいいことで笑って、笑わせて。
そんな場面しか、思い浮かばない。
楽しそうに笑う、未来の私と長友くん。
ちょっとだけ、興味も湧く。
長友くんと結婚したら、どんな生活が待っているのだろうって。
2人の未来がどんなものなのだろうって、見てみたいと思ってしまう。
「この指輪、サイズ合ってないし。私の指、こんなに太くないんですけど。」
「知らねーし、有沢の指輪のサイズなんか。あのな、こっちは選ぶだけで頭がいっぱいいっぱいだったんだよ!」
ブカブカの指輪が、愛おしい。
くだらない言い争いが心地いい。
きっと、こんな風に笑って過ごせるのだろう。
この人の隣にいられるのならば、この先もずっと。
こんな風に笑えるのだろう。
サイズの合わない指輪。
緩い指輪は、長友くんが初めて私にくれたプレゼント。
婚約指輪代わりのリング。
私と長友くんを繋いでくれる、大切な証。
「サイズ直してくるから、その指輪返せ。多分、すぐに直せる。」
長友くんがそう言って、私の左手を掴もうとする。
ヒラリ。
ヒラリ。
舞う様に、私の左手を掴もうとする長友くんから逃げる私。
「返さないよ。これ、私のだし。」
「は?俺がやったんだから、元はと言えば俺のもんだろ!」
「絶対、嫌だもーん。」
どんなにブカブカでサイズが合わなくても、これがいい。
この指輪じゃなきゃ、嫌だ。