社内恋愛のススメ
「し、失礼します!私、待ってる人が………。」
長友くんが待ってる。
私のことを待っていてくれる。
この寒空の下で、私を待っていてくれているのに。
長友くんの所に行かなくちゃ。
長友くんの隣に帰るんだから。
長友くんの隣が、私の居場所なのだ。
(長友くん………。)
長友くん。
長友くん、待ってて。
今、行くから。
長友くんの所に、今すぐ戻るから。
しかし、上条さんが、私のそんな行動を許すはずがなかった。
「どこに行く気だ。」
「そ、それは………。」
「僕が、君のことを逃がすと思っているのかい?………実和。」
起き上がろうとする体を押さえ付け、両手を掴まれる。
両手を縛られて、簡単に自由を奪われてしまう。
男と女。
その力の差は、埋められない。
これでもかと言うほど、今、そのことを実感している。
「実和。やっと、君と2人きりになれた………。」
私の上に馬乗りになる、上条さん。
上条さんの目は笑ってなんかいない。
射抜く様な強い瞳で、私を見つめる。
「いや、………いやあぁぁ!!!」
怯えてる私の揺れる瞳。
2つの視線が交わった時、上条さんの瞳が酷く悲しげに歪んだ。
「実和、好きだ。君のことが好きなんだ。」
上条さんの大きな手が、私の太股に触れる。
何度も感触を確かめる様に、触れていく。
ワンピースの裾を捲って、上条さんの細長い指が私のスカートの中に侵入する。
私は、足をバタつかせるだけ。
手首を縛られいる今は、それくらいの抵抗しか出来ないのだ。
「や、止めて!触らないで!!」
「僕には、君だけなんだ。君だけしか、いらないんだ………。」
「私は、私は………あなたをもう愛してなんかいない!」
「実和、君のことを愛してるんだ。」
撫でられた瞬間に感じたのは、愛じゃない。
恋しさでもない。
虚しさだけだった。
ただ、触られたくない。
長友くんではない人に、この体を触られることが嫌だった。