社内恋愛のススメ
「い、嫌………っ、やだ………、止めて!」
「実和、実和………、愛してるんだ、実和。」
私の名前を呼び、愛を囁く上条さん。
愛おしいそうに、私に触れる。
ずっと憧れていた。
仕事をする姿に。
パソコンに向かう背中に。
私に仕事を教えてくれる、その目に。
だけど、そんな上条さんは、もう存在しない。
私が好きになった上条さんは、もういないのだ。
ここにいるのは、私が知ってる上条さんじゃない。
全くの別人。
まるで別の人みたいに変わってしまった、憧れの人だ。
「さ、触らないで………。こんなことは止めて下さい!」
お願いだから、これ以上、思い出を汚さないで。
好きになった過去まで、醜いものに変えないで。
「あなたには、奥さんがいるでしょう………!?」
あんなに美しい人が、あなたの隣にはいる。
みんなに紹介出来る、自慢の妻がいるじゃない。
ほんの数時間前。
ステンドグラスが綺麗な教会で、目の前にいる上条さんは、別の人と愛を誓っていた。
私が見ている前で、別の人と。
それなのに、どうして。
どうして、こんなことが出来るの?
結婚って、そんな簡単に出来るものじゃない。
簡単に出来るなら、わざわざ神の前で愛を誓ったりしないはずだ。
他の人と一生をともにする誓いを立てておきながら、昔の恋人である私を抱こうとするの?
その理由を教えてよ。
ねぇ、上条さん。