社内恋愛のススメ



太股から、更に奥に進む手。

何の迷いもなく、私が履いている薄い生地のストッキングを脱がそうとする。


触られたくない。

それ以上、深い所には、誰にも触れられたくない。



足掻いてみせれば、上条さんから容赦ない仕打ちが与えられる。


パシンと、狭い部屋にこだまする、乾いた音。

乾いたその音と同時に、頬に鈍い痛みを感じた。



「い………っ、た………。」


あぁ、私、殴られたんだ。

上条さんに殴られたんだ。


ぼんやりする頭で、どこか冷静に判断している自分がいる。



あの頃みたいに、私を愛していると言ってくれるのに。

私を想う気持ちは、本物であるはずなのに。


今はもう、その気持ちすら信じられない。



何を信じればいい?

私は、上条さんのどこを信じればいいの?


上条さんは今日、結婚した。

私の目の前で、私ではない人と。


そんな人が囁く愛を、どう受け止めろと言うのだろう。



私の足を覆っていた肌色のストッキングが、ビリビリに破られていく。

跡形もなく、原型さえ分からないほどに。


荒っぽい手付きで脱がされていく、水色のワンピース。

長友くんが可愛いと言ってくれたワンピースが、長友くんではない人の手で脱がされている。



ボロボロだ。


ワンピースも、ストッキングも。

私の心も、私の体も。



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