社内恋愛のススメ
逃げても逃げても、上条さんは追ってくる。
どこまでもどこまでも、追いかけてくる。
離してなんてくれないんだ。
私に飽きるまで。
私の中に、欲望を全て吐き出すまで。
狭い部屋の中、逃げる場所なんて、それでなくとも少ないのに。
「い、や………ひ………っ、くぅ…………。」
触れ合う肌。
触れるだけで、鳥肌が立つ。
「ん、んん………っ、やぁ………はっ。」
触れ合う唇。
私は、その全てを拒絶していた。
私が触れて欲しいのは、この手じゃない。
私が欲しいのは、この唇なんかじゃない。
たった1人。
長友くんだけ。
長友くんのものしか、いらないの。
「長友くんは、外で待ってて。着替えて化粧を直したら、すぐに行くから!」
「おー、そうしてくれ。その顔、ちゃんと直してこいよ。」
「………行ってきます。」
長友くんとの約束を破って、裏口から外に出る。
長友くんは、きっと待ってる。
私との約束を律儀に守って、今も待っていてくれている。
それなのに、私はその約束を破ろうとしているんだ。
だって、こんな格好じゃ、長友くんの前に行けない。
長友の前に行ったら、私は自分を繕えない。
どんなに必死に、キスマークを隠しても。
その痕跡を隠そうとしても、私は長友くんの前で普通の顔なんて出来ないだろう。
長友くんなら、きっと見抜く。
私の異変を見抜いてしまう。
私に何かが起きたのだと、気付いてしまう。
そうして欲しくなくても、長友くんなら。