社内恋愛のススメ
式場を出て、真っ直ぐに向かった場所。
それは、産婦人科だった。
事前に電話をかけ、あることを聞く。
震える声で、電話口に出た受付の事務員にこう尋ねる。
「すいません、そちらで………アフターピル、処方してもらえますか?」
上条さんに無理矢理抱かれてしまった、あの時。
薄れる意識の中でも分かっていたことは、避妊をしていなかったこと。
上条さんは、何も着けていなかった。
着けようとすら、していなかったのだ。
どんなに朦朧としていても、そのくらいのことは分かる。
他の人と結婚までしているのに、上条さんは避妊をしようとしなかった。
まるで、それが当たり前のことであるかの様に。
「実和の体に、僕を刻み込んであげるよ。もうあんなヤツのこと、考えられなくなる様に………ね。」
あの言葉の意味は、このこと。
私の体に、上条さんを刻み込む。
それは、キスマークのことだけではない。
上条さん自身の種を、私に植え付けるということなのだ。
きっと。
本当の所はどうなのかは、本人にしか分からないけれど。
上条さんは、分かっているのだろうか。
この行為の先に、どういう未来が待っているのか。
今はまだ可能性でしかないけれど、そういうことも有り得るのだということを。
上条さんの考えなんて、分かりたくもない。
あんなことをするなんて、最低だ。
一方的に、自分の想いをぶつけて。
相手のことなんて考えずに、自分の欲望を吐き出して。
汚い。
汚い。
汚らわしい。
1番汚れてしまったのは、私だ。
私なんだ。