社内恋愛のススメ



初めての子供に、不倫相手との間に出来た子供というレッテルを貼られたくない。

愛しい我が子に、そんな重い荷物を背負わせることなんて出来ない。


だから、私はここに来ることを選んだ。



長友くんに合わせる顔なんて、ない。


他の男との子供を身籠っているかもしれない女。

自分ではない男に抱かれた女。



自分の意思ではなくても、裏切ったことに変わりはない。


長友くんを裏切ったんだ、私は。








クリーム色の室内。

柔らかい雰囲気で満ちた場所に立つだけで、思う。


私は、ここに相応しくない。

赤ちゃんを待つ母親がたくさんいるこの場所には、私は相応しくないのだ。



私が今からしようとしていることは、人を殺すこと。

芽生えているかも分からないけれど、芽生えていたとしたら、赤ちゃんを殺そうとしているのだから。


罪悪感を感じずにはいられなかった。



ボロボロの私を見て、看護師が呟く。



「まさか、あなた………。」


レイプされたの?

無理矢理、犯されたの?


そう聞きたがっているのは、理解出来た。


私が傷付かない様に、ハッキリと言葉にしないだけなのだと。



そうだよ。

それが事実。


私の意思なんて、関係なかった。



上条さんは、私がどう思おうとも、体を奪い、痕を残した。


止めてと言っても、聞き入れてなんてもらえない。

お願いだからと懇願しても、叶えてもらえない。



縛られた両手。

剥がされた衣服。


思い出すだけで、震えが止まらない。

止められない。



体だけではなく、心までズタズタに引き裂かれたのだ。


だけど、私は、まだその事実を認めたくなかったのかもしれない。



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