社内恋愛のススメ
もっとも、会社に行く気力も、今の私には残されていないのだけれど。
とりあえず、今日が日曜日で良かった。
本当に良かった。
(これから、どうしよう………。)
襲いくる吐き気の中で、考える。
今日は元から休みだから、まだいい。
でも、明日からは、また始まる。
私の日常が、否応なしに始まってしまうのだ。
こんな顔で、会社になんて行けないのに。
どんな状況下であろうとも、月曜日は訪れてしまう。
どうしようかな。
有給休暇、使っちゃおうかな。
どうせ、余っているんだ。
ここ何年か、有給休暇なんて使ったことがなかった。
それくらい、仕事に打ち込んでいた。
それしか、私にはなかったから。
有給休暇なんて、腐るほど余ってる。
こんな時にこそ、使ってしまえばいい。
こんな時だからこそ、使うんだ。
「………。」
一瞬でも、瞼を下ろせば浮かび上がる影。
惨状と言い表すに相応しい、その状況。
瞼を閉じることさえ躊躇われる、あの忌まわしい記憶が。
「実和………っ、いいよ………すごく気持ちいい。」
耳元で聞こえる、上条さんの荒い息遣い。
文香さんを選んだ。
文香さんと結婚式まで挙げたのに、私に好きだと言う唇。
私に愛していると、そう告げる。
私に触れる手に、優しさなんて感じられなかった。
怖かった。
恐ろしかった。
汚いって、そう思ってた。
忘れたいのに、忘れられない。
消したいのに、消せない記憶。
一方的な愛ほど、悲しいものはない。
虚しいものはない。
消えてしまえばいい。
この記憶も、心も、体も、全部消えてしまえ。
そうすれば、悩まない。
こんなに苦しむこともないのに。