社内恋愛のススメ
『逆襲』



長友くんに、全てを伝えるということ。

それは、私と長友くんの関係の終わりを意味している。


切ない関係の末に、やっと見つけた大切な人。

その人を失うのだ。





2度目の社内恋愛。


今度こそは、上手くいくと思ってた。



この手を離すことはない。

私のことだけを見ていてくれた長友くんのこの手を、私はずっと握っていられる。


ずっと続いていくものだと、信じていたんだ。



でも、それは単なる願い。

永遠を信じたかった、私の願望でしかない。


私が望んでいた永遠を壊したのは、私。


今の私と、私の過去の恋。

その2つが、長友くんと夢見ていた永遠を消していく。



あと、どのくらいなんだろう。

長友くんの隣にいられるのは。


あと、どのくらいなんだろう。

私が、長友くんの彼女でいられるのは。



ずるいと分かっていても、長友くんの手を離したくない。

長友くんのことを離したくない。


そう思うのは、罪ですか?

悪いことですか?









余りに余った有給休暇を消化し、私はあの日から2週間ほど会社を休んだ。


上条さんが残していった、体の傷。

それを治す為だけに、時間を費やしていく。



あの人が付けていったキスマークが消える。

殴られた頬の青みが薄れていく。


ゆっくりと、ゆっくりと。

それは時間をかけて地獄に落ちていく様な、そんな錯覚さえしてしまう2週間。



キスマークは消えていくのに、記憶は消えてくれない。

殴られた頬の青さは薄れていくのに、あの記憶だけは薄れてもくれない。


ふとした瞬間に思い出すのは、いつだってあの日のこと。

私の脳を簡単に支配していく、あの日の記憶。



< 313 / 464 >

この作品をシェア

pagetop