社内恋愛のススメ



「今夜7時、場所はいつもの居酒屋!」


部長の言葉に、みんなが何故かピシッと背を伸ばす。


もうこうなってしまったら、誰も逃れられない。

この場にいる人間は、ほぼ全員強制参加だ。



「有沢、店に電話して、予約取っておけよ。」


部長が指名したのは、私。


入社したばかりの頃から、部長は私のことを気にかけてくれている。

それは有り難いのだけれど、こういうことまで私に全て任せてくれるから困ったものだ。



仕事のご指名なら、とても嬉しいのだけど。

こういうご指名は、あまり嬉しくない。


断る勇気もないから、仕方なく返事をする。



「はい、えん…………ぶ、部長!」


まずい。

うっかり、宴会部長って呼びそうに、なってしまった。


さすがにその呼び名を、本人の前で言えるはずがない。



「ぷっ………、くくく………!」


クスクス笑ってる隣のデスクの男を、こっそりデスクの下で蹴り飛ばす。


笑いやがった。

人の不幸を笑いやがった。


くそ、長友め。


覚えてろよ。

仕事が忙しくても、手伝ってなんかやらないんだから………。



そんな成り行きで、週末の夜、上条主任の歓迎会が催されることになったのだった。



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