社内恋愛のススメ
「本棚の奥に、箱があったわ。隠しているのかもしれないけれど、私は見てしまった………。そこにあったのは、1枚の写真。」
目を閉じた、文香さん。
彼女の瞳に、涙が滲む。
ハラハラと、桜が舞う様に涙が散っていく。
その涙が、私の中に眠る罪悪感を呼び起こした。
(写真って、まさか………。)
私の写真ではないのだろうか。
それほど、長い時間をともに過ごしていた訳ではない。
上条さんと一緒にいられたのは、ほんの少し。
長友くんと付き合っている期間の方が、長いくらいだ。
しかし、写真は残っている。
撮った記憶もある。
カメラを持っていたのは、上条さんだ。
彼女の口から、私の予想を肯定する言葉が吐き出された。
「誰が映っていたと思う?」
「………、それは………。」
「あなたよ。あなたの写真を見つけたの。」
そんなはずはない。
そう言い返せない。
だって、私は知っていた。
あの人の、上条さんの気持ちを聞いていたから。
本人の口から。
「実和、実和………、愛してるんだ、実和。」
あの日、上条さんはそう言った。
自分の結婚式の後、妻とは別の女を抱きながら。
過去の女である、私を犯しながら。
私は、上条さんの気持ちを知っている。
結婚が決まる前も、決まってしまった後も、上条さんが見ていたのは私だった。
彼は変わらず、私だけを見ていた。
「確かに、上条主任とはお付き合いをしていました………。でも、それは、主任が結婚するよりも前のことです!」
そう。
私にとっては、過去のこと。
全ては、過去の出来事。