社内恋愛のススメ
長友くんだ。
変わっていない。
2週間前と同じ、長友くんの姿。
たった2週間。
他の人にしてみれば、あっという間に過ぎていく時間。
人間なんて、そんなにすぐに何かが変わる訳ではないのにね。
私には、この2週間は長かったんだ。
地獄にでもいるみたいに、果てしなく深くて。
先の見えないトンネルの様に、とめどなく長くて。
変わってしまったのだ。
私だけは変わってしまった。
だから、嬉しいのかもしれない。
安心してしまうのかもしれない。
変わらない長友くんの姿にホッとしてるのは、きっとそういう理由。
長友くんが視界に入っただけで、胸が騒がしくなる。
数秒前よりも何倍も速く、鼓動が脈打つ。
(長友………くん………。)
苦しいよ。
苦しくて、息が出来ない。
呼吸の仕方を忘れてしまったみたいだ。
ただ、長友くんが視界に入っただけなのに。
ほんの2週間前までは、当たり前のことだったのに。
長友くんという存在は、こんなにも私を狂わせる。
たった2週間、会えなかっただけなのにね。
会いたくて、会いたくて。
でも、会えなかった。
顔を合わせることが怖かった。
声が聞きたくて。
その頬に触れたくて、手に触れたくて。
強く抱き締めて、たくさんキスをしたくて。
もうそんなことは出来ないのだと、分かっているからこそ余計に。
寂しかったよ。
長友くんに会えなくて、寂しかった。
長友くんを身近に感じられないこの2週間は、私を孤独の淵へと追い落としていたのだ。
触れたくて伸ばそうとしていた手を、力なく真下へ下ろす。
触れる資格なんてない。
言葉を交わすことすら、いけないことの様な気さえするから。