社内恋愛のススメ



周りばかりを気にしてる、他の女とは違う彼女。

ニコニコと、愛想ばかりを振りまく女とは、一味違う女。



実は、こういう場って、男と女の出会いの場でもある。

だからこそ、浮き足立って、男漁りをしてる女子社員もたくさんいるのだ。


そんな中で見つけた、アイツ。



彼女の名前を知ったのは、入社式の直後。




「あー、初めまして。有沢です。」


まだ眠そうな声で、俺に挨拶してる。


目に涙、溜まってるし。

目、赤いし。


気を抜けば、またでっかい欠伸しそうだな、この女。



やばい。

入社式の前のコイツを思い出したら、また笑えてきた。



「ぷっ、………はははっ、あはは!」


思わず笑い出してしまった俺を、目の前の同僚となった女が睨み付ける。



「………、失礼なヤツ………。」

「だ、だって………、お前………ぷっ。」

「名前も名乗れないの?普通、自己紹介されたら、自分の名前を言うもんでしょうが!」

「わ、わりい………、ごめん。」


謝罪代わりに握手をしようと手を差し出したら、見事に払われた。


期待を裏切らない女だ、コイツ。



「俺、長友 千尋。………よろしくな。」

「よろしくしたくないけど、一応、よろしくお願いします。」


プイッとそっぽを向いて、払ったはずの俺の手に、自分の手を重ねる。



有沢 実和。

企画部に配属された、新入社員。


俺のデスクの隣の女。








とにかく、有沢は他のヤツとは違ってた。


元から、薄い化粧。

残業が続くと、それは更に顕著となる。



眉毛が消えてることにすら、気が付いてない。



< 374 / 464 >

この作品をシェア

pagetop