社内恋愛のススメ



信じられなかった。

信じたくなかった。


どうしても受け入れられなかったんだ。



だから、言った。



「有沢、結婚しよう。」

「………!」

「俺達、結婚するんだ。」

「な、に………言ってるの?」

「俺は、お前と離れたくない!お前がいなくなるなんて、俺には考えられないんだよ………っ。」



初めてのプロポーズ。


苦し紛れに言ったんじゃない。

有沢を引き留める為だけに言った訳じゃない。


俺は、有沢と未来を誓いたかった。

付き合い始める前から、結婚するなら有沢だと決めていたんだ。



結婚願望なんて、元々ない。

1人の方が気楽だし、自由だ。


いつかは結婚するのかもしれないけど、結婚なんてまだまだ先のこと。



束縛なんかされたくもないし、まだ若いんだから自由気ままに生きていたい。

そもそも、俺なんかが結婚出来るのだろうか。


その程度だった、俺の結婚観。

それをぶち壊したのは、有沢だ。



こんな女とずっと一緒にいられたら、面白おかしく暮らせるかな?

つまらなそうだと決め付けていた結婚も、楽しく思えるかな?


退屈だった人生が、最高に面白くなりそうな予感がした。



俺を飽きさせてくれない彼女と、この先もずっと。

そう思ってた。


でも、有沢は俺のプロポーズに答えることなく、俺の前から姿を消した。


俺の腕の中から、消えてしまった。



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