社内恋愛のススメ
でも、有沢は、この男を選んだのか。
本当に、目の前にいるこの男を選んだのだろうか。
にわかには信じられない。
有沢は、この男の未来を守る為に別れを選んだ。
社長の娘と一緒になった方が、上条さんの為になるだろう。
そう思って、別れたのだ。
去年の夏。
まだ、上条さんが婚約をしたばかりの頃。
そんな有沢が、この男を選ぶのか。
妻がいる男をわざわざ選んで、抱かれるのか。
そんなはずない。
俺が知ってる有沢は、そんな女じゃない。
「君では、有沢さんを………実和を満足させることなんて出来ないんだよ。」
息苦しそうに悶えながらも、俺を攻撃する言葉を吐き続ける上条さん。
よっぽど、俺の存在が疎ましかったんだ。
有沢の隣にいる俺が、邪魔で邪魔で仕方なかったのだ。
憎いよ。
お前が憎い。
世界中の誰よりも、目の前にいるこの男が憎いよ。
「………っ、どうせ無理矢理抱いたんだろ!?有沢が、お前に進んで抱かれる訳ない!」
「さあ、どうかな?」
「好きな女を貶めて、どうして笑っていられるんだ?」
「無理矢理なんかじゃないさ。僕が望んで、彼女も同じことを望んだから繋がったんだ。」
どうして笑えるんだ。
好きな女が、自分のせいで飛ばされたのに。
誰も自分の知ってる人がいない場所に、行かされているというのに。
有沢が、転勤を言い渡された理由。
本当の理由は知らない。
しかし、この男が関わっていることだけは事実だ。
狂ってる。
この男、狂ってる。
頭が痛い。