社内恋愛のススメ
今の私は、きっと醜い。
近付く勇気もないのに、新入社員のあの女の子を妬んで。
バカみたい。
バカみたい。
長友くんみたいに純粋な瞳、私の中にはきっと存在していない。
「ごめん、ちょっと酔ったかも………。」
嘘だよ。
酔っ払ってなんかいない。
あの光景を見ていて、酔えるものなら酔ってみたい。
酔っ払って忘れられるなら、そうしていたい。
「外の空気、吸ってくる。」
「は?有沢、ちょっと待てって!!」
長友くんが驚いた顔をして、私を止める。
こんな自分、みっともない。
こんな自分、誰にも見せたくない。
もう見たくない。
こんな自分も。
あの2人も。
私は長友くんの手を振り払って、席を外す。
長友くんの言葉を無視して、居酒屋の外に飛び出したのだった。
「あぁ、もう………!!!」
居酒屋を出て、すぐの場所。
コンクリートの地面に座り込む私。
どうにもならない。
どうにも出来ない。
その苛立ちの矛先を、そのまま自分にぶつける。
ぐしゃぐしゃと、頭を掻きむしる。
そんなことで、この憂鬱が晴れるだなんて、これっぽっちも思っていない。
だけど、そうせずにはいられない。
ショートカットの私の髪は、簡単に乱れていく。
「………。」
目を閉じることさえ、煩わしい。
目を閉じれば、すぐに先ほどの光景が浮かんでしまうから。
瞼の裏に焼き付いた光景。
クールな上条さん。
甘えた様子の、新入社員の女の子。