社内恋愛のススメ



あんな時だって、上条さんは表情を崩さない。

ポーカーフェイスであることは変わらない。


何を考えてるの?


分からないよ。

上条さんが何を考えてるのかなんて、私には全然分からない。



若い女の子に好かれて、嬉しい?

それとも、嫌がってる?


分からない。

分からないよ。


だから、困るんだ。



「私、何やってるんだろう………。」


こんな場所で。

たった1人で、いじけて。


何してるんだろう。

何やってるんだろう。

何がしたいんだろう。


ポツリと呟いた、独り言。

独り言は、すっかり暗くなった夜の空に吸い込まれていく。




ネオンが煌く、夜の街。

キラキラと宝石の様に、1つ1つの光が輝いている。


いつもなら、きっと綺麗だと騒いでる。

心を和ませてくれるはずの風景も、今の私の心には響かない。



何も届かない。

何も響かない。

何も感じない。


ただ、虚しいだけ。



泣きたくなるほど、綺麗なネオンの光。


それだけで、涙が滲み出そう。

気を抜いたら、泣き出してしまいそう。



上条さんは、憧れの人。

昔好きだった人で、ずっと憧れていた人。


それだけ。

それだけだよ。


今は、何とも思ってない。



それなのに、どうしてこんなに切なくなるんだろう。



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