社内恋愛のススメ
『贖罪』
side・上条
ビルが立ち並ぶ、都会の一角。
高層マンションの30階。
上から数えた方が早い部屋が、今の僕の部屋。
開け放たれた窓から入り込む、一陣の風。
その風に吹かれて、目を閉じる。
目を閉じて真っ先に浮かぶのは、妻の顔ではない。
今は僕の前にはいない、彼女の顔。
かつて愛した彼女の歪む顔。
ソファーに深く体を沈めて、彼女と過ごした大切な時間に思いを馳せた。
上条 仁、35歳。
有名大学をトップの成績で卒業した僕は、当然の様に一流企業と言われる会社に就職した。
レールを敷いたのは、自分ではない。
自分達と同じ道を歩く様にと、親が敷いたレール。
しかし、僕はそのレールから外れることもなく、抵抗することはなかった。
自らが望んだのだ。
そのレールの上を歩き続けることを。
誰よりも先を行く、その道を歩き続けることを。
他の連中を追い越して、仕事ばかりをする毎日。
いつしか芽生えた、出世したいという欲。
1番上に行きたい。
誰も自分の上にいない場所からの風景を、この目で見てみたい。
夢中になれるものがなかった僕は、仕事という夢中になれるものを見つけたのだ。
自分の願望を叶える為に、更に仕事に没頭していく日々。
そんな毎日の中で、僕は彼女と出会った。
「上条くん、ちょっといいか?」
パソコンに向かって、資料を仕上げている途中の僕。
僕が所属しているのは、企画部。
直属の上司である、企画部の部長が声をかけてくる。
普段は至って真面目だが、プライベートでは誰よりも率先して羽目を外す中年。
まるで子供の様な、そんな人。
それが、うちの部署のトップ。
「何でしょうか?」
眼鏡の端を持ち上げて、わずかにずれていた焦点を元通りに直してそう答える。
僕に返ってきたのは、意外な言葉だった。
ビルが立ち並ぶ、都会の一角。
高層マンションの30階。
上から数えた方が早い部屋が、今の僕の部屋。
開け放たれた窓から入り込む、一陣の風。
その風に吹かれて、目を閉じる。
目を閉じて真っ先に浮かぶのは、妻の顔ではない。
今は僕の前にはいない、彼女の顔。
かつて愛した彼女の歪む顔。
ソファーに深く体を沈めて、彼女と過ごした大切な時間に思いを馳せた。
上条 仁、35歳。
有名大学をトップの成績で卒業した僕は、当然の様に一流企業と言われる会社に就職した。
レールを敷いたのは、自分ではない。
自分達と同じ道を歩く様にと、親が敷いたレール。
しかし、僕はそのレールから外れることもなく、抵抗することはなかった。
自らが望んだのだ。
そのレールの上を歩き続けることを。
誰よりも先を行く、その道を歩き続けることを。
他の連中を追い越して、仕事ばかりをする毎日。
いつしか芽生えた、出世したいという欲。
1番上に行きたい。
誰も自分の上にいない場所からの風景を、この目で見てみたい。
夢中になれるものがなかった僕は、仕事という夢中になれるものを見つけたのだ。
自分の願望を叶える為に、更に仕事に没頭していく日々。
そんな毎日の中で、僕は彼女と出会った。
「上条くん、ちょっといいか?」
パソコンに向かって、資料を仕上げている途中の僕。
僕が所属しているのは、企画部。
直属の上司である、企画部の部長が声をかけてくる。
普段は至って真面目だが、プライベートでは誰よりも率先して羽目を外す中年。
まるで子供の様な、そんな人。
それが、うちの部署のトップ。
「何でしょうか?」
眼鏡の端を持ち上げて、わずかにずれていた焦点を元通りに直してそう答える。
僕に返ってきたのは、意外な言葉だった。