社内恋愛のススメ



「実和!」

「ん?」

「実和ってば………!私は実和がそんな感じだから、心配なの。」


紗織がそんな感じだと言い表したのは、私の風貌のこと。




化粧っ気のない顔。

眉毛も描いてないから、麻呂みたいな眉。


まぁ、これは当たり前。

だって、今日は休みだ。


休みの日に、メイクなんかしたくない。



生まれつき、栗色の髪。

その髪は短く、ボーイッシュ。


だけども、前髪を結っている今は、ちょんまげ。



うーん、いつからだっけ。

ショートカットなのは、社会人になってからずっとだ。


おまけに、服は着古したスウェット。



日曜日の昼。

同じ年頃の女の子は、きっと忙しくしてるはず。


エステに行ったり。

自分磨きに専念していたり。

はたまた、彼氏と愛を育んでいたり。


しかし、私はそんな日でも、家に籠もったまま。



予定なし。

色気なし。


そんな私を見て、紗織は純粋に心配になってしまったのだろう。



紗織の目を見ていれば、分かる。


紗織は、本当に心配してくれている。

嫌味で、こんなことを言っているんじゃない。



紗織の目は綺麗。

キラキラしていて、汚れなんてない目。


昔から、そう。

何の汚れもなくて、水晶みたいに澄んだ瞳。



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