社内恋愛のススメ
あぁ、ダメだ。
どんなに頑張っても、何も浮かばない。
真っ白なまま。
想像出来るのは、今の私と変わらない自分。
マイペースで、楽観的で。
色気なしの自分。
そんな、未来の私。
その隣には、誰もいない。
誰の姿も見えない。
具体的に、何も想像出来ないなんて………。
我ながら、情けない。
「そう言われても………。相手がいないから、こればっかりは。」
私はそう答えることしか、出来なかったんだ。
「実和ちゃーん、バイバイ!」
「だーーー!」
紗織の子供が、元気に手を振って別れを告げる。
時刻は、午後7時。
すっかり日も暮れて、すっぽりと闇の中に包まれた世界。
そんな闇の中で、私に手を振ってくれる2人。
やばい。
やっぱり、可愛い。
結婚なんかしなくてもいいから、子供は欲しいかもしれない。
子供が欲しいというか、海斗くんと紗南ちゃんが欲しい。
目に入れても痛くないって、このことに違いない。
紗織と話し込んでいたら、時間を忘れてしまって。
気が付いたら、こんな時間になってしまった。
何時間、ぶっ通しで話し込んでたんだろう………私。
「紗織、旦那さんによろしく伝えてね。遅くなるまで引き止めちゃってごめんなさいって、そう言っておいて!」
手を振りながら、紗織にそう言う。
「分かった。まぁ、気にする様な人じゃないから、大丈夫よ。」
紗織はそう言って、海斗くんの手を引く。
腕に抱くのは、まだよちよち歩きの紗南ちゃん。
幸せな家族の姿。
幸せな親子の姿が、ここにある。
それは、紗織が結婚してから築き上げてきたもの。
紗織と旦那さんが努力して、積み上げてきたもの。