彼女のすべてを知らないけれど
彼女のすべてを知らないけれど
「ちょ……! なんでっ!?」
一人暮らしのアパートに帰宅した俺は、ベッドルームに入るなりすっとんきょうな声を上げていた。
「あの~……」
恐る恐るベッドサイドに近寄り、すやすや眠る少女に声をかける。俺の呼び掛けもむなしく、一人ベッドを独占している推定十五歳の少女は目を覚ましそうになかった 。
どうしよう……! このままじゃ俺は、 犯罪者として世の中に身元を晒(さら)されてしまう!! テレビやネットという媒体を通して……!
いまや、ネットは情報の宝庫だ。それだけでなく、ネット社会と言われるようになってから、 日常的に出会い系サイト絡みの犯罪が増えたらしい。
俺は、普通に大学生やってる普通の男だ ! 少女を誘拐し監禁する趣味などない。でも、この姿を誰かに見られたら、否応なしに俺は『犯罪者』の烙印(らくいん)を押されてしまうだろう。
俺がそんな不安を覚え、色々先走った思考をしてしまうのも無理はなかった。
大学から帰るなり、見知らぬ少女が自分の部屋のベッドに寝ていたのだから。
その上、 彼女は一糸(いっし)纏(まと)わぬ姿だったのだから。