彼女のすべてを知らないけれど

今まで、こんなに立派で大きな神社が近所にあるということに気付けなかったのは、普段大学の行き帰りに使う道沿いではなく、奥まった道の先にこの神社が存在していたからだ。

俺は今、入学後にあったサークルでの、然の自己紹介を改めて思い出していた。


「月に一回、ちょっとした屋台が並ぶから、また、その時も遊びにきてな」

自室に俺を通すなり、然はそう言いニカッと笑った。

「ウチ、祭りのたびに場所貸してるんだ、屋台やってる人に。

焼きそばやタコ焼きはもちろん、たませんとかチョコバナナの店もいっぱい出るんだよ。どこもおいしいから、気分に合う店探したりするのも楽しいし」

「そうなんだ」

なるほど、だからこんなに大きな家に住めるのか、と、俺は一人心の中で納得した。 場所を貸すからには、それなりのお金を屋台業者からいただいているのだろう。然の家族が営む神社の収入源は、賽銭やお守り販売だけではないのだ。

昔からこの辺りに住む人は、初詣のたびにこの神社に訪れているに違いない。

さきほどチラッと視界に入った駐車場 の広さから察するに、遠方からもかなりの数の参拝客が来るのだろう。
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