彼女のすべてを知らないけれど
ウィンクルムがいなくなった直後、然が、特別に“あの”お守りをくれようとしたことがあった。
命守流願望成就札。命守神社で裏取引されている高価なお守り。ウィンクルムを人間にさせた万能札。
然は、俺を元気づけようとしてくれたんだと思う。気持ちはありがたかったけど、俺は然から命守流願望成就札を受け取らなかった。
自分の力で、ちゃんと立ち直りたかったからだ。
――ウィンクルムと別れてから、俺は色んな女の子に告白されるようになった。バイト先の年上の女の人や、同じ大学の子、駅で知らない子から声をかけられたこともある。
全て断ったけど、少しだけ揺れる時もあった。
他の子を見るようにしたら、ウィンクルムのことを早く忘れられるかもって思ったから。でも、俺の良心はいつも耐えてくれた。
ウィンクルムと同じくらい…ううん、ウィンクルム以上に思える相手じゃないと、ダメだ。
俺の心は今も彼女を――。
もしかしたら、死ぬまでずっと彼女を想いながら生きるのかもしれない。それも悪くないかもね……。