彼女のすべてを知らないけれど

大学へ行く時も、バイトへ行く時も、遊びに出掛ける時も、俺は、ウィンクルムが使用した命守流願望成就札を肌身離さず持ち歩いていた。

彼女のことを完全に吹っ切るまで自分を律するためのアイテムとして……。

「忘れなきゃいけないって分かってる。俺達の関係は終わってしまったんだから。

でも俺は……。今もまだ、ウィンクルムが好きだし、再会したいと思ってる」

ひとりで寂しい時、空に向かってそうつぶやくのがクセになっていた。


12月になってすぐ、初雪が降った。あまりに積もったものだから、その日は大学に遅刻してしまった。徒歩通学しているから早目にアパートを出たんだけど、慣れない雪に足をとられて早く歩くことができなかったから。

然は先に大学へ着いたらしい。

雪の日独特の真っ白な空に見下ろされ、俺はひとりモタモタと歩いた。頬に吹き付ける風が痛いくらい冷たい。

大学まであと少し。

バシャッ!!

人気(ひとけ)のない静かな歩道で、突然背中に何かを投げつけられた。

この感覚は今でもよく覚えている。小学生の頃、友達とやった雪合戦。雪を丸めて作った雪玉の衝撃そのものだった。

こんなことをしそうなのは、ミコトしかいない!!

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