彼女のすべてを知らないけれど
ミコトが片想いしている魔法使いの話を聞いた日。――あれ以来一度も姿を見せないイケメン神を懐かしみつつ後ろを振り返ると、そこにはミコトじゃなく、セーラー服を着た中学生の女の子が――ウィンクルムが、立っていた。
「――――――!」
幽霊?
ウィンクルムに未練たっぷり過ぎて、ついに幻を見てしまうようになったのだろうか。
雪景色の中、久しぶりに見る彼女の存在は何よりも綺麗に映る。
再会できた喜びが大きすぎて、彼女が着ている制服が近所の中学校のものだということに全く気付けなかった。
俺をにらみつけ、彼女は言う。
「あなた、ロリコンだったの?」
「ちっ、違うよ!どうしてそうなるの!!」
久々に会って第一声がそれ!?
拍子抜けした。何が何だか分からない。
「何が起きてるのか分からないって顔ね。私もよく分からないのよ。
夏、あなたが熱で魘(うな)されてる時、私はウィンクルムとしての生を終えこの世から消えた……。
そう思ったら、次に目が覚めると、人間の中学生、ウィーン=クルムとして生かされていたの。両親もいるわ。しかもお父さんはイギリス人、お母さんは日本人という設定よ」
「……嬉しい……」
「なっ……!」
俺は思いきり彼女を抱きしめる。今まで会いたいと願ったたくさんの空を思い浮かべながら――。