彼女のすべてを知らないけれど

「会いたかった!ロリコンでもいい!

好きだ。ずっとずっと、君のことを想っていたい」

「湊……」

終始気丈だった彼女の声が、瞬くうちに涙声に変わる。

「もっと呼んで。俺の名前……」

「湊……」

「もっと……」

「そんなに喜ばれたら、ここ何ヵ月もあなたに会うのをためらった私がバカみたい……」

「ありがとう、会いに来てくれて」

これからは、俺からたくさん会いに行くよ。



俺が持ち歩いていた使用済みの命守流願望成就札。その中には、何かの手違いで二つの木片が入っていた。

本来、ひとつのお守りに対しひとつの木片しか入れられない決まりになっている。木片には命守神社の社印が刻まれていて、これに願いを叶える効果がある。

木片が二つ入っていたから、ウィンクルムの願い(『人間になりたい』)と俺の願い(『ウィンクルムと会いたい』)が叶ってしまったのだ。

でも、俺がこのことを知るのはもっと後のことになる。今はただ、彼女と再会できた喜びで胸を満たしたかった。

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