彼女のすべてを知らないけれど
あとがき
数あるサイトの小説の中から貴重なお時間をさいてこの作品を読みにきて下さり、本当にありがとうございました。
途中、タイトルを変更したり話の流れが変わってしまったり、と、書くたびに忙しかった作品ですが、完結できて本当に嬉しいです。
書く前と後でだいぶ変わってしまったのは結末のあり方でした。
書く前は、ライトノベルを目指しコメディ調でありつつも動物の命について訴るような作品にしたいと思っていたので、ウィンクルムはこの世界から消え、最後はそのまま終わるつもりでした。一回亡くなった人が甦るという話に苦手意識がありましたし、『そんな簡単に死者が甦るのなら死は大したことじゃないよね』という雰囲気の作品になるのも避けたかったのです。
とはいえ、結果はこうなってしまいました。書いているうちに、湊に感情移入してしまったからです。
湊はいたって真面目で、非難される部分も特になく、作中でもっとも猫の命を大切に考える人物でした。そんな彼が最愛の人を亡くすなんて、見るに耐えられませんでした。
本当に作者都合極まりないのですが、自分がこう感じて初めて、今まで苦手と思い避けてきた『亡くなった人が甦る物語』を肯定的に見られるようになりました。
人は過ちも犯すけど、何かがあった時に救いの糸口になるのも人の存在なのではないかなと思います。
『彼女のすべてを知らないけれど』
これは、恋をする時に感じる『相手を知らないことで芽生える不安』や『知らないからこその好奇心』を混ぜて考えたタイトルです。
好きになった相手のすべてを知らないことで不安が湧くけど、知らないからこそ近付いていける可能性があります。そもそも、どんな相手であれ、すべてを知ることは一生ないのかもしれません。
知らないからこそ想いを続けられる。そんな場面もあるかもしれませんね。
本作品は、以前書いた『黒水晶』というファンタジー小説に通ずる物語です。黒水晶に出てくる自然の神は、本作品に出てくるミコトの同僚的存在です。
彼ら神々は様々な世界を移動しているという設定でこの作品を書かせていただきました。世界は違いますが、ミコト以外の神もどこかで元気に暮らしています。
最後まで読んで下さり、本当にありがとうございました。
2014年6月9日(月)