彼女のすべてを知らないけれど

ようやく、大学生活にも慣れてきた5月下旬。

大学近くに家(神社)がある然と帰宅しながら、俺は道端の光景を横目にしていた。

土地柄なのか、時代のせいなのか。この地域には捨て猫が多い。実家付近ではあ まり見られないことだった。

元々飼い猫だったのだろうと思われる高値の猫から、生まれつき野良だと分かる毛づやの悪い猫まで、様々だ。

「このへん、やたら猫いるな。大学の行き帰り合わせて、1日に十匹は見かけてる」

俺は、集合住宅地にさしかかったところで然に問いかけた。

「みんな、捨て猫?」

「うん、そう。飼い猫もいるかもしれないけど、首輪してないのばっかだし、捨てられたんだろうな。可哀想に」

然は遠い目で言った。

「って、口だけで情をかけるのは簡単なんだよな。実際、飼うとなったら大変なんだろうし……。まぁ、俺はペットとか飼った ことないからその苦労はよく分かんないけどさ。

一人が捨てると、みんなが真似して捨て放題。猫捨てる人間にとっては、猫すらゴミ同然なのかもな」
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