ピンキーリング【短編】
車の窓から、外を流れる雲をみる。
ときおり雲のすきまからこぼれる太陽の光がまぶしい。
……9年か……
そっとつぶやいてみる。
あたしと拓ちゃんが出逢ってから、もう9年が過ぎようとしている。
長かったようで、短かったと思う。
窓の外を眺めるあたしをミラーで見ながら、運転しているお母さんが声をかけてきた。
「ほんとに、子供の成長は早いもんね。
ななちゃんがもう結婚だなんて。」
お母さんはそう言いながら遠くをみつめる。
「いろんなことがあったわねぇ。」
…ーいろんなことか。
ほんとにこの9年間はいろんなことがあった。
だから余計に時間がたつのが早く感じたのかもしれない。