ピンキーリング【短編】
今日は、あたしたちの町で一番大きな夏祭りが行われる。
付き合いだしてから、部活や課外のおかげでまともにデートできていなかった。
だから、実際今回が初めてまともにデートできると思う。
ヤバいー…
幸せすぎてにやけるー…
今日は、夏祭りということもあってゆかたを着ていた。
拓ちゃんー…
どんな顔するかな…?
あたしは、このころから吉田のことを拓ちゃんと呼ぶようになっていた。
他の人は、拓ちゃんのことを吉田か拓と呼ぶから、拓ちゃんと呼べるのは彼女であるあたしの特権。
待ち合わせ場所に行くと、まだ拓ちゃんは来ていなかった。
そこにあるベンチに腰掛けて待つ。
今日は夏祭りだからゆかたやじんべいをきている人が多い。
ベンチに足をぶらぶらしながらまっていると、知らない男の人たちがやってきた。
「ねぇ、キミ1人?」
「いや、待ち合わせしていて…」
そう言い終わらないうちに、1人の男に腕をつかまれる。
「そんな待たせるような人ほっといて、いっしょに遊ぼうよ。」
男が腕に力をこめてあたしをたたせようとする。
そのときだった。
いきなり後ろからはがいじめにされた。
「ゴメンね。
ななはオレの彼女。
ほか、あたって?」
拓ちゃんのいきなりの登場に、あたしも男たちも驚く。
拓ちゃんを見た男たちは、「ちっ」と舌打ちをして帰っていった。
「なな、オレ、
めっちゃ焦ったからね。」
その場に座りこみ、上目づかいで見てくる。
「……ゴメン」
「けが、ない?」
拓ちゃんが優しく問いかける。
あたしはコクリとうなづいた。
「じゃあ行きますか!」
拓ちゃんがそう言ってあたしに手を差し出した。
あたしは、その手にそっと自分の手を重ねた。