等身大の愛唄
満員電車には、合わなかったものの…


龍哉の歌を聞いていたら、気付くと辺りは真っ暗。

ハッと思い、龍哉の前から逃げようとするが…もう、時すでに遅し。


そして、この状態。



「え―――――っと…寝てた?」



嘘をつくも、



「アホ。ずっとこっち見てただろ。」



バレている。

通用しないと思ってたけどさ。



「いいじゃん!別に見たって。」

「開き直ったよ、コイツ。」



『はぁ――っ』と、呆れながら溜息を吐く龍哉。

な、何よっ!その深い溜息はっ!!!


カチンと来たあたしは、



「帰るから!じゃぁねっ」



そう言って、龍哉に背を向け歩き出そうとした。


ガシッ



けれど、龍哉に腕を捕まれて、後ろに引き戻された。



「何?あたし、帰るん――」

「送る…から、大人しくしろ。」



あたしの言葉を遮って、俯きながらそう言った龍哉。



その時…龍哉の顔が赤かったなんて、あたしは知らなかった。

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