stand up!!
「ちょっと大人気なかったんじゃない?」
「何がだ!!」
更衣室のロッカーを閉めたと同時に、小早川のぶっきらぼうな答えが返ってきた。
池田は「おーこわ」と呟きながら、さっきまで着ていた胴着から、制服へと着替える。
「何がだじゃないよ。安城さんのこと。彼女をいじめすぎなんじゃない?」
小早川は長椅子に腰を掛け、ブーツの靴ひもをきつく縛っている。
池田から顔の様子は見えないが、本人も反省しているのだなと読み取った。
「あぁ、さっきのことは謝ろう。つい俺もカッとなってしまったしな…」
小早川はすっと立ち上がり、「行くぞ」と池田に声を掛け、更衣室を後にした。
池田は困ったような顔でふっと、息を吐いた。
更衣室は本館から長い廊下で続いている。
この廊下は更衣室しか続いておらず、人通りも少ない。
「そう言えば、最近覗き魔がいるらしいよ。業務部の子たちが見たって言ってるのを聞いたんだー」
小早川はあぁと答えるだけで、黙々と本館へ歩く。
池田は呆れたようにため息をまた吐く。
何度目のため息だろうかと一瞬考えたが、数えられるわけもないので止めた。
「今日、安城さんに言ったろ?お前なんか誰も襲わないって!!」
池田が急に大きな声を出すものだから、小早川は驚いて振り返った。