stand up!!


「待ちなさい!!待てっていてるでしょうが!!!!」


声を掛け追いかけるが、その男は振り返りもせずに走り続ける。
なんで、あたしのことを知っている?
なぜ、あたしの軍服や柔道着を持っていく?
もっと金目の物とか、下着とかを持っていくものじゃないのかよ!


最後にあいつが手に取ったもの。
あれは、あたしにとって大切なもの。


あたしをこの世界に導いてくれたものなのに!

あたしに踏み出す勇気をくれたものなのに!


「待ちなさいって言ってるでしょうがぁ!!!!」


更衣室前の廊下から中庭に出る。
男はその足を止めないが、息を荒げていることに気付く。


あともう少し。
必死に男に手を伸ばす。
あたしも息が上がってきた。
あと少し。
あたしの手が男の服を掴もうとしたとき、足が絡まり態勢が崩れてしまった。





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