stand up!!



小早川は何も話さない。


「確か、武道のとき小早川って安城さんと組手してなかった?」
「…」
「安城さんその時肩痛めたよね?どっちだっけ?」
「…」


あー、確かあたしも知っている。
業務をサボって更衣室で暇つぶししているとき、肩を痛めた浩が騒いでいたっけ。
相手は小早川少佐って言っていたような…。


小早川に池田と凛子の視線が集まる。
2人の痛い視線に、逃げられないと悟った小早川は、小さくすまんと一言発し、1つ咳払いした。


「安城を襲った男を知っているか?滝沢は安城の古くからの友人だと聞いたのだが…。」


古い友人ね…。
あたしと浩は幼稚園からの友人であり、一緒に数々の試練を乗り越えた戦友でもある。


浩を襲った男には心当たりがある。
それをあたしの口から話してもいいのかと困った。
浩のプライバシーにもあたることであり、その話をトッケイ組織に話しているのか。
この話を聞いたこの人達トッケイが、今後どう動いていくのか。
話した後が、予想できない。


「どうなんだ、滝沢?」


小早川が滝沢に迫る。
小早川は組織内でも知らない人はいない、“鬼の少佐”。
いつも眉間に皺を寄せ、鬼の形相で迫る。
小早川の微笑みは今だ誰も見たことがないという…。


「おい、滝沢聞いているのか!」
体がびくっと反射的に反応してしまった。
これが噂に聞く、“鬼の少佐”の部分なのね。と冷静に判断した。






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