stand up!!
「うるさいなー。けが人の部屋なんだから、静かにしろよな!!これじゃあ、ゆっくり眠れねーよ!」
凛子が握った浩の左手が動いた。
「浩、起きたのね!」
1人で起き上がろうとしたが、右手がうまく使えずにいると、凛子と池田少佐が手を貸してくれた。支えられながら、上体を起こす。
小早川は予想通り驚いたような顔をしていた。
「安城、お前大丈夫か?」
「そんな顔で言われても全くうれしくないし。大丈夫かっていう顔で言う台詞じゃないですよ」
でたー。これが小早川少佐と浩の“水と油”関係!!
浩がけがを負っていなかったら、今にも一戦始まりそうな雰囲気である。
「お前が気が付いたのならお前に聞くこととする。お前を襲ったやつは誰だ?話していた様子だと、知り合いか?」
小早川少佐が鬼のような形相でにらんでいる。
左側にいる凛子に目を配ると、少し怯えた様子であった。
凛子がここにいるということは、あたしが倒れたと連絡を受け、業務そっちのけでここに来てくれた。そして、この怯え方…。小早川少佐があたしを襲ったやつは誰だと迫ったのだな。
凛子はあたしの過去を経歴を知っている数少ない人である。
あたしを気遣い何も話さなかったのだろうな、ありがと。
凛子の頭にそっと手を伸ばし、撫でる。
凛子は一瞬驚いたような顔をしていたが、安堵した様子に変わった。さっきの怯えた顔はどこにもなかった。
「あいつは見たこともない奴だった。でも、誰だかは見当がつく」
凛子が強くあたしの左手を掴んだ。あたしを心配しているのだろうと感じ取った。
この一言で、あたしの立場がどうなるのかという不安はあるが、そんなことは関係ないと思った。ずっと嘘をついたままトッケイの一員でいることの方が、ずっと…。
「あいつはたぶん、蓮龍組(れんりゅうぐみ)の組員だ。」
「なぜ、的確にそんなことが言える?!蓮龍組と言えば、ヤクザの中でも名の知れたとこだぞ!そんな奴がお前に用があるわけっ!」
「あたしは、蓮龍組“蓮龍龍五(たつご)”の一人孫娘、安城浩だ」