stand up!!




「…………と、お嬢が話しておりました。」


「そうか、これが最後の忠告だったのに、残念だ。」
「会長、それではお嬢は…。」
「仕方がない、あいつが決めたことだ。もう、この儂と縁を切ったといったのだろ?」


会長と言われるその男は、和服を着、煙草をふかしている。
薄暗い部屋には、月に明かりだけが頼りであった。
月の光に照らされた、背中には蓮龍会と刺繍されていた。


「我が血筋がまた、血を流すのは実に残念だよ。なぁ、浩…。」


男は立ち上がり、窓に近づく。
月明りに照らされた、男の目は凶器に似た鋭さがあった。


「おい、白神。」
「はい。」
「儂はもう休む。あとは、頼んだ。」
「はい、かしこまりました。」


白神という男は、会長の姿を見送ると胸元から一丁の拳銃を取り出した。


「おい、待てよ。俺は!」
「お前は会長の命を遂行できなかった。失敗には死を。」


-パァン―
乾いた音が響いた。
白神が去った部屋には、火薬と鉄の匂いが漂う。
「この畳も交換ですね。」



白神がボソッと呟いた。
その男はもう動くことはなかった。








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