stand up!!
「くそむかつくー!!!」
ガンッと更衣室の壁を殴る。
当たり前のように壁は壊れることはなく、浩の拳に痛みが走るだけだ。
「なーにやってんの?」
拳の痛みに声が出ないところに、制服を着た女性が更衣室に入ってきた。
「滝沢ー」
滝沢 凜子(たきさわ りんこ)。
警察の業務を担当ている通称“情報の女王”。
浩と同期であり、数少ない親友の1人である。
「どうせ、また小早川少佐とケンカしたんでしょ?」
凜子も浩と小早川のケンカには慣れており、こういった状況で名前が出てくるのは小早川少佐でしか考えられないからだ。
「聞いてよ!あいつ、あたしの着替えを見たいとおもっている奴なんか1人もいないっていったのよ!!!失礼極まりない!」
「残念、あんたの着替え見たいと思う人なんて、この世の中にいたらすごいと思うわ」
凜子は浩の3つ隣にある自分のロッカーを開け、口紅をだした。
「男のような性格の女に手を出す人なんていないのよ。まさにあんたのような男勝りの人なら同然」
浩はうぅ~と小さく唸り声をあげて、その場にしゃがみこんでしまった。
その姿はまるで子犬のようにかわいらしいものであった。