16歳の天使~最後の瞬間まで、キミと~
「きゃっ……!」



見上げるとそこには、変わらず仏頂面の名良橋君が立っていた。

反抗する間も理由を訊ねる間もなく、教室から引きずり出される。



「ちょ、名良橋く……」

「……」

「痛いよ離して!」



どれだけ叫んでも名良橋君は掴んだ手の力を緩めることはなく、人も疎らな廊下を大股で歩いていく。

そしてたどり着いたのは、いつかも名良橋君と過ごしたことのある講堂。

そしてその中を通り抜け、部室がある方向へ向かう。

案の定、連れ込まれたのは高野君に病気のことを話した男バスの部室だった。



名良橋君が、名良橋君じゃないみたいで――怖いよ……。



ガチャリ、という音が響き、名良橋君が後ろ手で鍵を閉めたのだと気付く。



< 116 / 220 >

この作品をシェア

pagetop