16歳の天使~最後の瞬間まで、キミと~
不思議に思っていると、名良橋君は真剣な表情のまま薄く口を開く。



「暇だったらでいいんだけど……。観に来ないか?」

「……え?」

「1年だけの大会だから、俺も高野も出る。……早坂が転校する前に、俺が実戦でプレーする姿を見てほしい」

「……っ」



言葉が出なかった。

だから、変わりに何度も頷いた。

視界がぼやけていく。

やだ、涙なんて。

普通は泣くところじゃないのに。



「……何泣いてんだよ」

「だって……っ」

「ほんと泣き虫だよなぁ、早坂って」

「……名良橋君は、泣かないよね」



泣きそうに、顔を歪ませたことはあったけど。

そう遠くない過去に思いを巡らせ、涙を拭う。



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