16歳の天使~最後の瞬間まで、キミと~
袋から薬を取り出し、一気に飲み込む。

その様子を見ていた高野君が、ぽつりと言葉をこぼした。



「プラマイゼロだった……?」

「え?」



唐突な質問の意味がわからず問い返すと、高野君は今度は私の目を見てはっきりと口を開いた。



「名良橋と出会ったこと、何の意味もなかった?」

「え……?」

「頼む、答えてよ」



力強い言葉に、身動きがとれなくなる。

ゼロなわけない。

無意味なわけ、ないじゃない。

だって名良橋君は、残りの人生に希望をくれた大切な人。



「名良橋君と出会えたことは、私の人生で一番大きなことだったかもしれない」

「……そっか、よかった」



高野君は一度言葉を切り、その場に座り込んだ。



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