16歳の天使~最後の瞬間まで、キミと~
か細い声で紡いだ言葉は名良橋君だけの耳に届き、夏の訪れを告げるような生ぬるい風にのって消えていった。

名良橋君は前を向いたまま、「そうだな」と呟いて。

時が止まればいいだなんて、そんなのただの夢に過ぎないって知ってるけど、さ。



「……」

「……」



流れる沈黙が、全く息苦しくなくて。

チラリと盗み見た名良橋君の横顔は、どこか儚げだった。



「ありがと、名良橋君」

「……え?」

「ちょっと強引だったけど、私をグループに入れてくれて。1人に……しないでくれて」



例えるなら、私は海で名良橋君は空だった。

本来なら交わる筈のない、水平線に広がる2つ。

名良橋君が手を引いてくれたから、残りの人生、こんなにも煌めいてるんだよ。



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