16歳の天使~最後の瞬間まで、キミと~
私が病気になったのも、逃げる先に選んだのが名良橋君と同じ学校だったのも。

あの日、保健室で名良橋君と話したのも、梨央さんが夜逃げしたことも戻ってきたことも。

きっと全部、必要だった。

何かが欠けていたら、私の恋は恋じゃなかった。

だからねぇ、笑って伝えるよ。

名良橋君への、感謝の言葉を。



「名良橋君に出会えて、本当によかっ――」



言い終わる前に、視界から青が消えた。

空も海も、見えなくなった。

見えるのは――名良橋君の、切なく揺れた瞳だけ。



「……っ」



ゆっくりと離された唇が、熱を帯びて。

私の頭は、名良橋君のことでいっぱいになった。

名良橋君は眉間に皺を寄せ、少し怒ったように言葉を紡ぐ。



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