16歳の天使~最後の瞬間まで、キミと~
「今生の別れみたいに言うんじゃねぇよ……」



悔しそうに唇を噛んだ名良橋君の手が、小刻みに震えてた。

本当のことを言ってしまいたくなって、だけど言えなくて。

どうしたら巧く伝えられるんだろう。

どうしたら嘘を吐かずにすむ?



「……ごめん」



口を衝いて出た言葉は、何に対してかもわからない謝罪の言葉で。

名良橋君は何も言わず、スロープを使い車椅子で浜辺へと下りた。

その後を追おうと立ち上がった刹那、急激な痛みが私を襲う。



「……っ」



思わずその場にしゃがみ込み、乱れた息を整える。

まだ頑張ってよ私。

今は。

今だけは、ただの女子高生でいたいのに。



「……早坂?」



心配そうな声で呼ばれ、何とか立ち上がる。



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