16歳の天使~最後の瞬間まで、キミと~
「え……?」

「一緒に過ごした1ヶ月は、嘘なんかじゃなかったろ?」



名良橋君の瞳から、ぽつりと雫がこぼれ落ちた。

それは初めて見る、キミの涙。



「……嘘じゃなかったとしても、忘れていいよ。私のことも、約束も」



これがせめてもの償いだと、強がった。

だけど名良橋君には全てお見通しだったようで。

車椅子から身を乗り出した名良橋君は、私の体を包み込んだ。



「名良橋く……」

「俺に言ったじゃん、強がらなくていいって。だったら、お前も強がるな。俺が……傍にいるから」



堰が切れた。

堪えていた涙が溢れ、嗚咽が漏れる。

余命を告げられてから、名良橋君と出逢ってから、好きになってから、どれだけ泣いたかなんてわからないけど。



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