16歳の天使~最後の瞬間まで、キミと~
それだけを言い残し、私はその足で体育館へ向かった。

無人の体育館に広がる静寂が、私の熱くなった心を冷ましてく。

余命通りなら、7月に私はいなくなる――それを忘れてしまわぬよう、私は小さく唇を噛んだ。

痛い、――生きてるんだ。

生きてなきゃ、この痛みは感じられない。

ただのうのうと生きていた頃には恨めしかったことも、今ではとても幸福となって私の中に舞い降りる。

生きている今は幸せだ、そう思うのと同時に、死が近付いていることを突きつけられていたのだった。





体育館倉庫から、試合では使われないような擦り切れたボールを取り出し、両手で弄ぶ。

これも全部、名良橋君の所為。

名良橋君が私にボールなんて渡すから、思い出してしまった、閉じ込めた筈の想い。





< 21 / 220 >

この作品をシェア

pagetop