16歳の天使~最後の瞬間まで、キミと~
一年前の私は、ただがむしゃらに未来を信じてコートを駆け回ってたんだ。

――バン……

打ち付けられては跳ね返る、バスケットボールの音と、加速していく鼓動が、重なった気がして。

気が付けば、私はリング目掛けてボールを放っていた。

――シュッ……

そんな音を残して虚しく転がるボールは、惜しくもリングには届かなかった。



「重……」



巧くいかない何もかもが私の世界を黒く塗り潰し、侵食していく。

学校さえ来なければ、名良橋君みたいな人に絡まれる心配もない――だけど。

大好きだった家族を壊してしまって、そして手に入れたのがそんなものなんて虚しすぎる。



「……バスケ、したかった……な」





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