16歳の天使~最後の瞬間まで、キミと~
関わらない、誰にも言わない――決めた筈なのに、その決心は儚く崩れ散った。



「……ほんとは……高校でもバスケするつもりだったの……」



持っていたボールが私の手から滑り落ち、跳ねる音が虚しく部活に広がる。

滲む視界の中で、高野君が変わらず私を見据えていることだけはわかった。



「でも……出来なくて……」

「……うん」

「……運動しちゃ駄目、って……せんせ……言うから……」

「先生?」

「……心臓近くに……腫瘍あるの、悪性の……」



もう時間がない、そう言ったとき、大きな温もりに包まれた。

それが高野君だと言うことに気付くまでに用いた時間は、10秒をゆうに超えていたけど。



「……ごめん、俺……軽々しく聞き過ぎた……。嫌だったよな、今日仲良くなったばっかの男にこんなこと話すの……」





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