16歳の天使~最後の瞬間まで、キミと~
大学生――そのとき、私はもうここにはいない。

わかってはいたのに、名良橋君の笑顔を見ているとつらくなった。



「……早坂」

「……ん?」



名良橋君は一瞬、躊躇ったように目線を落とし、その後すぐに私を見つめた。

変わらない、真っ直ぐな目で。

私にはない、何かを宿して。



「バイク、免許取ったら後ろ乗ってくれるか?」

「……だから、転校するって……」

「もっと未来の話をしてんだよ。大学生になったって、いつでも会えんだろ」



嬉しい。

だけど同時に、苦しい。

名良橋君は大学生になるけど――きっと、漸く結婚が出来るようになる16歳のまま私の時間は止まってしまうから。



「早坂、言ったじゃん。いなくならねぇって。だから、約束して」



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